書評 父親子育て実践

「十字架」 by 重松清 ~いじめ自殺を通じて成長していく人達の物語~

今回の書評は、僕の大好きな重松清作品から

「十字架」です。

 

主人公は真田裕(ユウ)

 

中学2年生の時から物語はスタートする。

 

ある日、ユウの同級生、藤井俊介(フジシュン)が

自殺した。

 

同じクラスメイトだった子からのいじめが原因

 

そのフジシュンの遺書が見つかったところから物語が

進み始める。

 

遺書には、4人の名前が記されていた。

 

まず、いじめの主犯格だった「三島武大」と「根本晋哉」

それに主人公の「真田裕」に「中川小百合」

 

なぜ、自分の名前が遺書に?それも「親友だった」

とフジシュンが書いている内容に戸惑うユウ

 

そして、もう1人戸惑っているのが中川小百合(サユ)だった。

 

サユは、フジシュンが自殺した当日誕生日だった。

 

そして、フジシュンは、自殺する直前にサユの自宅に電話を

かけていて、誕生日プレゼントを渡そうとしていた。

 

仲がよいわけではなく、あまり話もしたことがない

 

そんな同級生から誕生日プレゼントを渡したいと電話がかかってきて

戸惑い、電話を切ってしまうサユ。

 

この事件のその後、20年間をユウの視点を中心に描かれている作品です。

 

この作品の面白いのは、事件当時のことだけでなく、その後のユウやサユ

そして、フジシュンの家族や同級生達のことが描かれている点です。

 

実際、世の中で起こっている事件も、事件当時のことは多く

マスコミが報道したり、本になって出版されたりします。

 

でも、その後、家族やその事件に関わった人達が、どのようにその事件

と向き合い、生きているのか?までは報道されることは少ない。

 

あくまでも小説ですが、登場人物の苦しみや心の開放、人生とは?

幸せとは何か?を考えさせられる作品です。

 

ここからは、ネタバレをしないように、僕が印象に残った登場人物

を紹介しながら、「十字架」について語りたいと思います。

 

1.あの人

 

この小説は、ユウの視点を中心に描かれているのですが、

ユウが「あの人」と呼んでいるのがフジシュンの父です。

 

ユウとあの人は、フジシュンの葬儀で初めて出会うのですが、

遺書を読んでユウをフジシュンの親友だと思っている「あの人」

 

「フジシュンを助けてくれなかった」と思っている「あの人」は

ユウに怒りの感情をあらわにします。

 

いや、親友とかじゃなくて、仲良くなんてなかったんです」とは

いえないユウ。

 

その後、20年間にわたって、ユウと「あの人」の付き合いは続きます。

 

僕も今、小さな息子の父親なので、「あの人」の気持ちに共感できる

こともあれば、ユウに対して可哀そうと思ってしまうシーンもあります。

 

ただ、代わりのいない息子を自殺で亡くし、何も気づいて

あげられなかった自分、そして周りへの怒り、くやしさ

 

そんな複雑な感情が入り混じり、葛藤しながら生きる

不器用な「あの人」

 

同じ父親として、自分が「あの人」と同じ立場だったらどうする?

と考えさせられました。

 

2.ユウ

 

ユウは、中学2年の時には、フジシュンとあまり仲良くなく、

周りから見ても、親友と呼べるような関係ではありません。

 

それでも、ユウは、遺書の内容を否定するような発言はなく

親友として、フジシュンの家族と付き合っていきます。

 

なんで、俺が親友なんだよ!! ふざけんな!! 俺には関係ない

 

そんな気持ちもありながら、いじめを見て見ぬふりをして

何も行動していなかった自分を責めるユウ

 

彼は、大学生になり、結婚し、子供が生まれます。

 

大人になっていく中で、事件のこと、フジシュンやあの人への

想いにも色々な変化が訪れます。

 

人間が成長していくというのはこういうことなのかもしれない。

 

そんな風に思わせてくれるユウの生き方・あり方が描かれています。

 

3.サユ

3人目は、中川小百合さん サユです。

 

彼女は、フジシュンの片思いの相手だっただけ。

 

そのことで、事件に巻き込まれていきます。

 

「自殺直前の電話でもっとやさしく対応しておけば」

「プレゼントを受け取っていれば」

 

フジシュンは死ななかったかもしれない。

 

そんな後悔と強烈な自己否定が彼女を苦しめます。

 

そんな彼女とこの事件がきっかけで仲良くなっていった

ユウとの関わり、関係性も微笑ましく、せつないのです。

 

20年かけて、この事件のことで苦しみ続けたサユは

幸せな人生を歩んでいるのか?がとても興味深かったのです。

 

4.藤井健介(フジシュンの弟)

最後の4人目は、フジシュンの弟、健介です。

 

彼は、当然兄を亡くし、悲しく戸惑いながらも、

必死で乗り越えようとしている姿が感動的でした。

 

長男を亡くし、途方に暮れる両親を支えよう。

自分は近くにいよう。そんな行動がせつなくもあります。

 

彼は、事件当初、親友のはずのユウに対しても敵意の感情を

あらわにします。

 

ただ、その感情も時間を経ることで、少しずつ変化していきます。

 

ユウ同様、20年かけて、大きく成長していく姿、事件を受け止め

前を向き、自分の人生を歩んでいこうとする姿そのものが印象的です。

 

まとめ

今回は、重松清「十字架」の内容と僕が印象に残った4人の

登場人物を紹介しました。

 

今回、紹介した4人は、僕がこの小説の中で、特に魅力を感じた

4人です。

 

このブログを書きながら感じたことは、僕は、困難や苦しみと

向き合い、それをきっかけに変化、成長していく人達

 

そんな人達に魅力を感じてしまうのだということ(笑)

 

人生、生きているとどんな人にも葛藤、苦しみ、困難との

出会いがありますよね。

 

そんなネガティブな出来事から、逃げたり、周りのせいにしたり

それでもやっぱり向き合ったり。

 

時間が掛かっても、その出来事を通じて、得られることが

あり、最後は、みんな幸せな道を歩んでいける。

 

人生とはそうありたいと、「十字架」を読んで気づかされました。

 

僕の人生もこれから色々なことが起こりますが、最後は幸せな道に

続いていると信じて、これからの人生を歩み続けたいと思います。

 

今回紹介した4人の登場人物の変化や成長、そして20年後どのような

人生になっているのか?に興味のある方、是非ご覧ください。

 

 

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